共有財産とは?対象となるものや財産分与の際の注意点についても解説
「共有財産」は、夫婦が協力して婚姻期間中に形成した財産のことです。家や預貯金、不動産などが対象となります。財産分与をするときには公正証書を作って合意の内容を残すことが重要です。
離婚時に問題視されるのが共有財産です。とはいえ、共有財産の言葉を知っていても正確な意味を理解していない人は多いといいます。具体的に対象となる物を理解しておくことで、離婚時にスムーズに対策を講じることができます。また、離婚などで財産分与時に注意しておきたいポイントなどを正確に理解したうえで分与をスムーズに行うことが必要とされているため、よく確認したうえで実行することが重要です。
[ご注意]
記事は、公開日(2022年11月9日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士に最新の法令等について確認することをおすすめします。
共有財産とは?
共有財産とは、夫婦が結婚している時で、別居していないときに一緒に形成した財産を指します。
民法では夫婦が一緒に手に入れた財産は共有財産と推定されるという定義があり、結婚前の財産を除き結婚中に形成した財産は共有とみなされるのが特徴です。なお、推定されるというのは、個人特有の財産であるという証拠をもって明らかにできない場合は共有財産となるという意味で、証拠があれば特有財産になります。 専業主婦(主夫)の家庭で、夫または妻が働いている場合に貯金や家を購入したときの名義が働いている側であっても、パートナーがサポートしてくれたからこそ財産を形成できたと判断されるため、共有財産となることは事実です。
別居している場合
夫婦で協力して財産を形成しておらず、それぞれの行動の結果で財産を形成できているため、たとえ婚姻中であっても共有とはなりません。
単身赴任中の場合
別居とは違うため、注意が必要です。もし単身赴任中にパートナーが浮気したことにより離婚するとしても、単身赴任中浮気が発覚するまでは婚姻関係が継続していると判断されます。
夫婦としての婚姻関係を継続することが難しい状況である浮気が発覚した時点か、離婚調停を申し立てた場合か、どちらで判断するのかは弁護士などに相談してみることが重要です。
なお、単身赴任時だけではなく、浮気発覚時など別居を開始した時点を明らかにできる証拠などがあると財産分与での支払いも大幅に異なるため、事前を確認できるように記録などを残しておくと便利といえます。第三者の証言などもあるとさらにいいでしょう。
共有財産の対象
共有財産の対象となる物は意外と多いです。夫婦関係を続けているうちに形成されていくものであるため、種類が多岐にわたるのは当然のことといえます。
預貯金
最も大きなポイントとなるのは預貯金です。結婚後毎月貯金をして貯めた金額は全て共有財産となります。預け先が金融機関ではなく、社内預金やタンス貯金であっても同様です。額縁の裏や本棚の間、更に家具の隙間などに隠しているへそくりなども対象となりますので離婚前によく確認しておいたほうがいいでしょう。
不動産や有価証券
不動産や有価証券も共有財産の一つです。土地・建物の区別は一切なく、全てが対象となります。住宅ローンを組んでいる場合にはローンの残っている金額を住宅の評価額から差し引いた金額が財産分与の対象となるため、計算しておくことが必要です。有価証券は国内外の株式、投資信託などをはじめ、ソーシャルレンディングや仮想通貨も対象です。
なお、財産分与時には日本円で計算されるため、現在保有しているポジションではなく、離婚が成立した時点での法定通貨との相場で計算されることになります。
個人年金
高齢者の離婚の場合、個人年金なども対象となっているため、弁護士と相談して計算することが間違いのない結果につながりやすくなります。保険の満期で戻ってきたお金なども対象となるため、くまなく確認しておくことが大切といえます。
「年金分割制度」についてはこちらの記事もご覧ください。
婚姻中に購入した家具や美術品、ペットなど
婚姻中に買った家具や美術品、ペットなども対象です。家具や自動車、美術品などの場合は査定評価額から計算されます。なお、ペットは生き物ですが法律上は物と扱われているため、財産分与の対象です。
住宅ローンやカードローン
これ以外にも住宅ローンやカードローンなども対象といえます。相手側の債務超過などの場合は財産分与とはならない可能性があるため、注意してください。
共有財産の対象外
夫婦で暮らしていても特有財産は存在しています。特有財産の最も顕著な物は、独身時代にお互いが購入や貯蓄したものです。独身時代に買った株式や土地・不動産なども共有財産ではありません。結婚前から持っていたものは全てお互いの特有財産となるため、共有財産と勘違いして勝手に売り払ってはいけないといいます。また、結婚後に親や親族から相続した財産も特有財産の一つです。
ただし特有財産とはならず、一部が共有財産と判断されることもあります。例えば結婚前に分譲マンションを購入してローンが残っていた場合、ローンの残高を支払った分は共有財産となる可能性が高いです。共有財産と特有財産が混在している場合には、共有財産と認められた分だけを配偶者と分け合う形になるため、正確に算出しなければなりません。
「特有財産」についてはこちらの記事もご覧ください。
特有財産の中には株やFXなど利益を得られる可能性のある物も多いです。価値の変動する物から利益が得られた場合には、婚姻中であれば共有財産ではないかと考える人もいます。基本的に株や投資などをしていたものを財産として受け継ぎ、そこから出た利益は共有ではなく特有財産です。
不動産物件を所有している場合、家賃収入を得られる可能性がありますが、この場合は状況により多少異なります。管理などを企業に依頼しておき、一切パートナーに任せていない場合は特有財産です。対してパートナーが管理人代わりに掃除などの協力をしている場合には、共有財産とみなされる可能性があります。判断が難しいことも多いため、一度弁護士と相談して話し合うことが重要です。
共有財産を財産分与する際の注意点
共有財産を分与するときには慰謝料と財産分与を区別しなければなりません。共有財産はあくまでも2人が築き上げてきた物であり、慰謝料とは大幅に異なります。また、夫婦が協力して築き上げた共有財産は貢献度に応じて分配されるものであるため、必ずしもすべてが半分に割り切れるわけではないのも事実です。
ただし双方が合意の上で財産分与時に慰謝料を一括で清算するなどの場合には、必ずしもこの限りではありません。財産分与と慰謝料の話を分けて話し合うのか、あるいは財産分与時に一括で分けるべきなのかは弁護士など第三者を入れて話し合ったほうがいいでしょう。
話し合いを済ませて合意した財産分与は、公正証書を作ってお互いに納得できる形で残しておくことが大切です。書類がないと後からトラブルに巻き込まれる可能性が高いため、注意をしておかなければなりません。
公証役場で公証人のもと作成される公的な書類であるため、財産分与を適切に行ったことが形として残ります。必然的に適切な書類と認識される可能性が高いため、万が一の時のトラブルを解決するときに大きく役立つ可能性が高いです。
財産分与の請求可能な期間は、離婚後2年以内
なお、知っている以外に隠し財産がないか、探偵などを雇って調べておいたほうがいいといわれています。後から非常に高額な資産が形成されていたことを知っても、財産分与時に発覚していない場合はトラブルの元です。後からもめたりしないよう慎重に確認してから分与をすることが必要です。 共有財産の判断が難しい場合には、弁護士と相談して納得できる形で分与することが望ましいです。必要な場合は調停をしなければならない場合もあります。
まとめ
共有財産とは夫婦が結婚していて別居しておらず、協力し合って形成した資産のことです。対象となるのは現金などの預貯金だけではなく、有価証券や不動産、美術品や家具・家電、住宅ローンなどとなります。対象外となるのは独身時代に持っていたものや親族から贈与・相続したものです。財産分与するときには双方でよく話し合い、公正証書を作成してください。