財産分与の対象になる財産は?対象外の財産は?手続きも完全解説
離婚において、「離婚原因が不貞行為など、法に触れるものであれば慰謝料」、「子供がいれば親権や養育費」など、決めなければならない事項は多岐にわたります。その中でも財産分与の問題はどの夫婦にとってもつきものではないでしょうか。
「財産分与のことなんかより、とにかく早く離婚したい」、「分割できるほど財産がない」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。このコラムではどういったものが財産にあたるのか、詳細をご紹介します。正しい知識がないともらえるものがもらえず、損をしてしまいます。ぜひお読みください。
[ご注意]
記事は、公開日(2022年10月27日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士に最新の法令等について確認することをおすすめします。
財産分与とは?
財産分与とは夫婦が婚姻期間中にともに協力して築いた財産を、離婚によりそれぞれに分配することをいいます。
離婚の際、相手方に財産分与を請求できることが法律で認められています。どちらの収入が多い少ないは関係ありません。どちらかが専業主婦(夫)であっても、専業主婦(夫)の支えがなければ、一方が働いて収入は得られないと考えられており、ともに築いた財産とみなされるのです。
しかし請求が可能な期間は、離婚後2年以内という期限があります。また財産分与したくないという考えから、隠されてしまう、使い込まれてしまうといった恐れもあります。離婚を考え始めたら、協議するまでの準備段階として、いくら財産があるのかを把握することが必要です。
また夫婦共働きで、特段大きな財産はなく、家は賃貸で、必ずしも財産分与が必要でない夫婦もいらっしゃいます。財産分与をするか否かは、夫婦の話し合いで決めます。法律上、「財産分与請求権の放棄」といわれます。いったん放棄してしまうと、特別な事情がない限り、撤回は難しいため慎重に選択しましょう。
財産分与の種類
ともに築いた財産を等分する財産分与に加え、「離婚後に相手が経済的に困窮する可能性を見越して扶養する場合」や、また「どちらか一方に離婚原因があり慰謝料を請求する場合」、それらの要素を合わせた財産分与があります。詳しい内容について解説していきます。
清算的財産分与
もっとも基本的な考えの財産分与です。婚姻期間中に二人で築いた共有財産を分与する方法です。
たとえ一方に離婚原因があったとしても、清算的財産分与においては影響されず、請求すれば認められることになります。
扶養的財産分与
離婚時における状況を判断し、どちらか一方が離婚後、経済的に困窮することが明らかな場合、相手に対して経済的安定まで月々一定額の生活費を支払う方法があります。これを扶養的財産分与といいます。
扶養的財産分与の対象となる例
- 健康状態が悪く働けない状況
- 高齢や専業主婦であったため、就職先を見つけるのが困難
- 小さな子供がいるためフルタイムで働けない
慰謝料的財産分与
離婚の原因次第では、離婚原因をつくった側に慰謝料を請求できます。その慰謝料と財産分与は本来分けて算出するべきものです。
しかしながら、どちらも金銭的な問題であるため、財産分与に慰謝料分を含めて支払うケースがあります。例えば慰謝料として金銭を支払うことができないため、不動産を譲渡するなどのケースは慰謝料的財産分与であるといえます。
財産分与の対象となる財産とは?
それでは具体的に財産の対象となるものには一体どのようなものがあるのでしょうか。
財産分与の対象となる財産
対象となるものは、婚姻期間中に夫婦の協力により築いた財産です。共有名義はもちろんどちらか一方の名義であっても共有財産となります。
共有財産と見なされるものは婚姻中にお互いの協力で築いたものかで判断されます。別居時に築いた財産であれば、共有財産の対象外となってしまいます。
「共有財産」についてはこちらの記事もご覧ください。
不動産や車
残りのローンがない場合、売却して売却金を半分に分ける、または一方が住み続ける(車の場合は使用を続ける)場合、査定額を算出し、その半分を支払うなどの方法があります。
しかしながら、ローンが残っている場合は複雑です。ローンの残債が、査定価値より上回る場合は、ローンの残債を差し引いた分が財産分与の対象となります。
反対に、ローンの残債が、査定額を上回る場合は財産分与の対象とはなりません。
現金、預貯金、有価証券
婚姻期間中に築いたものは、個人名義であっても共有財産に分類されます。
退職金
すでに受け取っている場合、勤務期間と婚姻期間が重なっている期間に応じて算出します。また受け取っていない場合も、財産分与の対象となる可能性があります。それは、会社の規定や雇用契約書などによって、退職金の支払いや算出方法が明確な場合において判断されます。
年金
年金に関しても、財産分与の対象となります。両者共働きで年金を納めていた場合、婚姻期間中の厚生年金納付実績が少ない側が多い側に請求できる仕組みです。しかしこれは相手の合意が必要となります。
また専業主婦(夫)で第3号被保険者であった場合は、相手の合意なく請求が可能です。
生命保険などの解約金
解約金が発生する場合は、財産分与の対象となります。加入期間は、婚姻期間中に相当する期間で、婚姻前や別居期間は含めません。
財産分与の対象とならない財産
「共有財産」とは別に、「特有財産」があります。これは夫婦の協力で得たものとはいえないどちらか一方の財産を指します。
- 親族からの相続により得た財産
- 独身時代に築いた預貯金
- 独身時代に購入した有価証券
- 独身時代に購入した不動産や車
特有財産であっても、その価値が夫婦の協力があって維持された、または増加されたものと証明できれば、貢献度に応じて対象となるケースもあります。
財産分与の手続き
財産分与をどう分けるかは夫婦の話し合いによって決めます。しかしながら話し合いでまとまらない場合は、離婚調停やさらには裁判へと長引く可能性があります。
対象となる財産を確認する
財産分与の対象となるものを抽出していきます。それぞれ価値の根拠となるものを集めることが重要です。
対象となる期間は、婚姻後の同居期間中にともに築いた財産です。住宅や車などは購入時の価格ではなく、現在の価値の算出が必要です。ローンの支払いが残っている場合、算出方法は複雑になります。専門の業者による査定を依頼する必要も出てくるでしょう。
夫婦間の協議
財産分与は共有財産の等分が基本ですが、双方が合意すれば割合なども自由ですしすべての共有財産を分割する必要はありません。例えば、どちらか一方が家に住み続け、もう一方が預貯金を全額請求する、などといったパターンもあるかもしれません。
しかしながら上述した通り、財産の算出方法は複雑で、「扶養的財産分与」や「慰謝料的財産分与」の方法がとられる場合もあります。また財産の算出方法に間違いがある、財産に漏れがあるなど、のちにトラブルに発展する可能性もありますので、書面化しておくとよいでしょう。
離婚調停や離婚裁判の可能性
夫婦間の協議では合意が得られない場合、離婚調停を申し立て、調停員を介して財産分与を話し合うことができます。また離婚後であっても同様に、「財産分与請求調停」を申し立てることができます。
その後、調停でも解決できなかった場合、離婚訴訟を起こす流れになります。これが離婚裁判で、裁判所の判決が下されることによって決まります。
まとめ
以上、財産分与について対象となる財産やその手続きについて解説いたしました。夫婦にはさまざまな形がありますが、財産分与となるとどの夫婦でも直面する可能性が大きい問題といえます。
まずは離婚を考えたら、財産の把握とその金額を算出しましょう。住居を含め金銭的な問題を解決できなければ、離婚後の生活において、経済的に困窮してしまう可能性があります。早く離婚したいからといって、なんの準備もなく進めてしまうと損をする可能性がありますので、十分注意しましょう。離婚をお考えの方の参考になれば幸いです。