事実婚の解消方法は?財産分与についても解説
近年婚姻届を提出せず、夫婦のように同居し生活する事実婚が増える傾向にあります。法律的に夫婦別姓が認められていないことや、婚姻をすることによりさまざまな権利が制限されることを嫌い、自由に生活したいという人が増えているのもその要因です。
しかしこの事実婚の状態にはあらゆる制約があるほか、夫婦であれば認められる当然の権利が認められないということもあるため、そのメリットやデメリットを熟知しておくことが重要となります。
[ご注意]
記事は、公開日(2022年10月31日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士に最新の法令等について確認することをおすすめします。
事実婚とは?
事実婚とは、事実上婚姻を行っているような生活の状態であるのに、婚姻届を提出していない場合を指します。生計をともにして、生活をしている状態で、外見的には一般的な夫婦と違わない状態を指すことが多いものです。
日本では概念的なものと受け止められている面がありますが、それでも近年ではこのような形が増えていることから、法律的な権利についてもその一部が認められる場合があります。法律上ではその一定の基準を満たしたものを事実婚と定義しており、これにはいくつかの条件があります。
事実婚と定義する条件
お互いに婚姻する意志を持っていること
1つは婚姻届を提出していないとしても、お互いに婚姻する意志を持っていることです。特に対外的に夫婦として生活していることや、結婚式を行っているなど、生涯のパートナーと周囲に認められる行動をとっていることが重要なポイントになります。
対外的な届け出
さまざまな権利を得るために、書類上の手続きを行うことが可能です。最近では住民票に未届けのパートナーと記入する項目が存在し、これを届け出ることによって対外的に事実婚を証明することができます。
また社会保険制度では第3号被保険者という項目があり、婚姻届を提出していなくても配偶者と同じような保険上の権限を得ることができるようになっています。このような対外的な届け出を行っていることで、事実婚として認められさまざまな権利を得ることができるものとなっているのが特徴です。
同居の継続期間がポイントとなる場合もありますが、これは明確には定義されていません。ただしある程度の同居の継続は概念的に必要なものとなっており、おおむね3年以上というのが一般的です。
事実婚の離婚(解消)方法
事実婚の離婚(解消)方法についていくつか紹介します。
事実婚を届け出た内容を変更
事実婚の場合には離婚届を提出する必要はなく、単純に同居を解消すればよいというケースが少なくありません。しかし最近では、住民票に未届けの配偶者という記載欄があり、もし事実婚を解消した場合にはこれらの変更届を提出する必要があります。
その他にも社会保険上の届け出を行っている場合にはこれを変更するなど、事実婚を届け出た内容を変更することで解消をすることが事実上可能となります。
近隣の人には離婚した旨を伝える
ただし事実婚にはさまざまな形態があり、対外的な届け出を行っていなくても長期間同居し、対外的に夫婦であると認識されている場合には、これを解消するための手続きや届け出が必要になる場合があります。近隣の人には離婚した旨を伝えることが必要となりますし、さまざまな支援などを受けている場合にはこれを通知することも重要です。
日常的な生活を営む上で必要な対応は確実に行っておくことが重要であるとともに、周辺の人々に対する説明も必要です。そのため、実際の手続きは婚姻届を提出している場合とあまり違わないというのが実状であり、同じように振る舞えばよいものとなっています。
事実婚で子どもを認知している場合
事実婚で子どもを認知している場合は、さらに適切な手続きが必要になる場合もあります。慰謝料や養育費の問題など、通常の離婚と同じようにさまざまな課題を処理する必要が生じます。事実婚を解消する場合は婚姻届を提出していないためスムーズに行えると考えている人も多いのですが、実際には通常の離婚の場合と同じように揉めることも多いので、この点は十分に認識しておくことが重要です。
事実婚の離婚(解消)時に慰謝料請求はできるの?
事実婚の解消時は、状況にもよりますが慰謝料を請求することが可能な場合があります。特に子どもを認知している場合や、あらゆる届け出を行っている場合は、これを解消するために与える不利益を賠償しなければならず、婚姻届を提出している場合と同じように調停を行わなければならないケースも少なくありません。
慰謝料が発生するケース
特に慰謝料が発生するケースは、一般的な婚姻状態と同じように不貞行為があった場合や、正当な理由なく一方的に解消を行う場合などです。これは事実婚であっても法律上婚姻関係にあると認められることから、状況に応じて慰謝料の請求が認められるものとなっています。
しかし法律に則ってこれらの慰謝料を請求する場合は、事実上の婚姻状態であり対外的にも夫婦と同等の関係であることが認められていなければなりません。そのためこれを証明するためにさまざまな書類が必要になる場合もあり、ケースによっては認められない場合もあるので注意が必要です。
事実婚の状態を継続したい場合
事実婚の状態を継続したい場合は、世帯を同じにするための世帯変更届を提出することや、公正証書を作成し事実上の夫婦関係であることを対外的に証明する方法があります。また自治体によってはパートナーシップ制度が認められているところもあり、婚姻届を提出していなくても事実上の婚姻状態にあることが対外的に証明されるものとなっています。
それぞれの地域の制度や特性を理解し、必要な対象を事前に行っておくことで婚姻届を提出した状態と同等の権利を維持し、慰謝料請求の面でも重要な要件となることを知っておくと便利です。
事実婚の離婚(解消)時に財産分与はできるの?
事実婚の場合の財産分与は法律では認められていないため、一般的な婚姻状態のように配偶者にその財産分与が行われることはありません。そのため配偶者が亡くなった場合は、財産を引き継ぐことができず、法律上は相続人から除外されてしまうことになります。
地域によってはパートナーシップ制度を導入しており、これにより財産の相続を認めているところもありますが、現在の民法上では相続権を持つことができません。最もよいのは婚姻届を提出し法律上夫婦になることですが、事前に公正証書や遺言書を作成し、その相続権をパートナーに与えておくのも一手です。
海外では事実婚であっても、財産の分与を認めているところが少なくありませんが、あくまでも民法上婚姻状態は婚姻届を提出することで認められる仕組みになっており、事実婚は概念的なものという認識が強くなっています。
「財産分与」についてはこちらの記事もご覧ください。
まとめ
事実婚は何らかの理由により婚姻届を提出していない状態で、対外的に認知される状態である場合を指します。法律的なさまざまな権利を得られることが多いため、内容を理解しておくことが重要です。特に婚姻の意思があることが対外的に認められる場合は、婚姻届を提出している夫婦と同等の権利を持てることも多いので、この点を意識しておきましょう。