離婚慰謝料の相場は?請求できるケースとできないケースも解説
離婚を考えている方にとって、「どのように話を切り出そう」や、「離婚後の生活はどうしよう」と不安要素は多いことでしょう。
さらにそのうち、相手に対して慰謝料を請求したいという方もいらっしゃるのでないでしょうか。このコラムではどのようなケースが慰謝料を請求できるのか、そしてその金額の相場や手続きの方法などを解説いたします。離婚や慰謝料請求をお考えの方の参考になれば幸いです。
[ご注意]
記事は、公開日(2022年10月27日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士に最新の法令等について確認することをおすすめします。
離婚慰謝料とは?
「配偶者が不倫・浮気をしている」「DVやモラハラで肉体的・精神的苦痛を感じている」「配偶者がまったく生活費を入れてくれない」など、どちらか一方に原因がある場合は相手に慰謝料を請求することができ、請求された側も慰謝料を支払う義務があります。
これは離婚を望んでなかったにも関わらず、相手が一方的に離婚原因を作り出し、離婚することになってしまった精神的苦痛を慰めるために支払われます。
離婚慰謝料は「離婚自体慰謝料=離婚すること自体に対して」と「離婚原因慰謝料=離婚原因に対して」と、それぞれ分類できます。
しかしながらその内訳をそれぞれ算出することはありません。その総額をまとめて慰謝料として請求することになります。
離婚慰謝料を請求できるケースとできないケース
それではいったいどのようなケースが慰謝料請求のケースにあたるのか否か、説明していきます。
慰謝料請求ができるケース
不貞行為(浮気・不倫)があった場合
配偶者が別の方と不倫の関係になることを不貞行為といいます。
具体的にどこからが浮気や不倫で、どこまではそうじゃないかという判断は人それぞれ基準が異なることでしょう。しかしながら、慰謝料を請求できるケースでは、性行為やそれに近い行為があったことが証明できるかといった基準が考えられます。
悪意の遺棄(いき)があった場合
夫婦は同居しながらそれぞれが協力し、生計をともにして生活を送る義務があります。それにも関わらず、その義務を理由なしに果たさないことを「悪意の遺棄」といいます。遺棄には「保護義務を怠る」という意味があります。悪意の遺棄とは具体的に以下のケースが挙げられます。
- 正当な理由なしの別居
- 健康であるのに働こうとせず生活費を入れない
- 全く家事をやってくれないなど婚姻生活に非協力的
DVやモラハラがあった場合
DVやモラハラにより肉体的苦痛や精神的苦痛があった場合に、慰謝料を請求できます。また配偶者からだけではなく、姑などの同居家族からのDVやモラハラがあり、それを配偶者が気づいているにも関わらず黙認している場合なども、配偶者およびその同居家族を相手に請求が可能です。
その他
上記以外にも、慰謝料を請求が可能なケースをご紹介します。
- アルコール依存症などで働かない
- ギャンブル依存症などで借金をつくる
- 一方的に性交渉を拒否する
慰謝料を請求できないケース
全ての場合において慰謝料を請求できるわけではありません。具体的な例を見ていきましょう。
性格や価値観の違い
これはどちらか一方に責任があるとはいえず、特に損失も生じていない場合は慰謝料請求のケースには当たりません。
自分にも責任がある場合
相手だけではなく自身も離婚原因を作り出している場合は、逆に相手から慰謝料を請求される可能性もあります。お互いに慰謝料を請求しあうことは事実上可能ですが、その額は相殺され、慰謝料が発生しないか発生してもその差額だけとなります。
その他
上記以外にも慰謝料が発生しないケースとして考えられるものは下記です。
- 長期間の別居をしていた
- 不貞行為がかなり以前のことで、請求権の時効が過ぎている
離婚慰謝料の相場
慰謝料といっても具体的な金額の算出方法などが決まっているわけではありません。夫婦間の協議によって双方が合意すればいくらでも構いません。相手に財力があれば高額請求が可能な場合もありますし、まったく貯金もなければ少額を分割で支払ってもらうパターンもあるでしょう。
金額の相場は、請求する事由や婚姻期間の長さなどによって異なりますが、30~300万円ほどが目安になっています。子供の有無や婚姻期間、不貞行為の期間やその頻度などによって慰謝料は増減するといえます。
しかし不可能な支払い金額を請求してしまうと、合意が得られにくく、離婚成立まで長引く可能性があります。また財産分与や養育費など、そのほかの金銭的な決めごとにも影響してくる恐れがあります。相手の年収なども考慮しないと、回収が難しいといえます。
離婚慰謝料の請求手続
慰謝料を相手側に請求するには、具体的にどのタイミングがよいのでしょうか。基本的な流れを説明いたします。
夫婦間の協議による請求
まずは夫婦間で離婚の話し合いを進める中で、慰謝料についても協議します。こちら側から請求する意思がある旨を伝えるのです。伝えた内容が書面として証拠に残るようにするのがいいでしょう。おすすめなのは、内容証明郵便で送付することです。郵送した送付日や受取日、文書の内容まで記録してもらえる郵便局のサービスです。
そして同意が得られれば、慰謝料についての内容が記載された文書を公正証書として残しておきます。
離婚調停
夫婦間での協議がまとまらず同意が得られない場合は、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。離婚調停では調停委員が仲介人として協議に入ってくれます。そのため、夫婦二人きりでの話し合いが難しい場合などでも有効です。そして合意が得られれば、家庭裁判所側で調停調書を作成してくれます。調停調書には合意内容を執行させる強制力があります。例えば相手からの支払いが滞った場合や拒否した場合、相手の給与や銀行口座を差し押さえる強制力があるのです。
離婚裁判
離婚調停でも合意が得られなかった場合、次のステップとして家庭裁判所に離婚裁判を申し立てる流れとなります。離婚調停はあくまで夫婦間での合意を目指して行われる協議ですが、離婚裁判は証拠などをもとに裁判官が判決を下すことによって決定がなされます。
不倫相手へ慰謝料を請求する場合
不貞行為の事実があった場合、不倫相手にも慰謝料を請求できます。不倫をした責任は法律上、その2人にあります。そのため、両者に慰謝料を請求することもできますし、どちらかにだけ請求することも可能です。その費用の負担割合は特に決まっていません。
もし離婚せずこのまま生計をともにすることを考えているのであれば、配偶者への慰謝料請求はあまりメリットがないといえます。そのため不倫相手にのみ慰謝料を請求するケースが多いようです。
離婚後の慰謝料請求も可能?
離婚した後に慰謝料を請求することは、結論からいうと可能です。例えば「とにかく早く離婚したかった」といった場合や、「離婚後に不貞行為を知った場合」があるでしょう。
離婚の慰謝料は、損害賠償請求と見なされます。損害賠償請求権は3年の時効があるため、離婚の成立した日から3年以内であれば請求することが可能です。また離婚後に相手の不貞行為を知った場合は、その事実を知った日より3年以内となります。
しかしながらすでに離婚しているため、相手の同意を得ることがさらに難しい状況であるといえます。
まとめ
以上、離婚における慰謝料について、請求できるケースや金額の相場、請求手続きの流れなどについてご紹介しました。自身の状況を踏まえて、「相手に請求できるのか」、「非現実的な額を請求しようとしていないか」、「どのような流れで慰謝料を請求するのか」などがお分かりいただけたでしょうか。
慰謝料は「離婚そのものに対して」、「離婚原因に対して」慰めの意味を込めて支払いが発生します。しかしながらその金額には、一般的な相場がありますし、相手の支払い能力も考慮する必要があります。また請求できる期限もありますので、注意する必要があります。離婚や慰謝料をお考えの方の参考になれば幸いです。