夫の家庭内暴力で別居状態。妻と実家で生活していた長男が夫に連れ去られた。長男を取り戻したうえで離婚裁判をしたい。
[ご注意]
記事は、公開日(2023年1月12日)時点における法令等に基づいています。
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法的手続等を行う際は、弁護士に最新の法令等について確認することをおすすめします。
ご相談内容
夫の家庭内暴力が原因で別居状態にあったところ、夫が、妻とともに妻の実家(茨城県水戸市内)で生活していた長男(小四)を、神奈川県藤沢市内の夫の実家に連れ去ったという状況にありました。
夫は離婚を渋っていたものの、妻は夫の家庭内暴力に心情になっており、既に離婚を決意していましたが、妻には長男が小一の頃に浮気歴があり、それが原因で夫婦間でトラブルが発生したことが離婚裁判での子の取り扱いに不利になるのではないかと強く怖れておりました。
このため、妻から、まず長男を取り戻した上で、離婚裁判に進んで欲しいという強い要請のもと依頼を受けたという事例でありました。
解決内容
最優先事項は、長男を確実に確保するという点にありましたので、およそ1年4か月をかけ、先述の夫が離婚を渋っているという状況を利用してその油断を誘うとともに、これに乗じて、妻側に戻りたがっていた長男と密かに連絡を取り付け、長男に対する夫の実家の監視が緩んだ頃を見計らって、長男の自発的な意思による脱出というカタチで夫の実家から妻の実家へ向かわせ、さほどに遠くない場所にまで出向いていた妻と合流するという手法を採りました。
その上で、妻と長男については予め手続してあった保護施設に入所させることで安全を図るとともに、夫に対してその所在を隠し、次の段階として離婚調停・離婚裁判に進みました。
夫側は、この間も長男を取り戻すべく妻の実家に押しかけるなどしましたが、最後まで妻と長男の所在をつかむことが出来ず、最終的には、離婚裁判において、小四の長男が妻との生活を望んで夫の実家を脱出したという事実が重視され、同子の親権と引き取りは妻に確保されることとなりました。
弁護士からのコメント
離婚のトラブルの中で、夫あるいは妻が、子の確保を目的に実力行使に出るというケースがありますが、本件では、その子が小学4年生という年齢であったことから、その意思を尊重するという方向に話を進めることが出来るという見込みがあり、それを念頭に方策を練ることが出来ましたが、これが乳幼児であった場合には、また別の方向で策を講じる必要があったと思います。
また,この種の案件は、素早く事を進めるべきものと、本件のように敢えて長期間をかけるべきものがあるなど、具体的な事情によって柔軟に方策を立てていく必要がありますので、とりわけご依頼人との間の意思の疎通は極めて重要となってまいります。