養育費っていくら?相場や支払期間について解説
夫婦が離婚をするときは、親権を得る側は「離婚後、子どもを育てて行けるのか」、親権がない側は「養育費を毎月払えるか」と不安に感じているのではないでしょうか。親権を得る側も得ない側も、疑問や不安材料を少しでも取り除くため、離婚を決める前に養育費の相場を事前に確認するといいでしょう。今回は養育費の不安や疑問を解決するため、養育費の相場、養育費の金額が決まる要素、養育費を支払う期間を解説いたします。
[ご注意]
記事は、公開日(2022年10月31日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士に最新の法令等について確認することをおすすめします。
養育費とは?
未成年の子どもが成人して社会に出るまでにかかる費用を「養育費」といいます。養育費は子どもの衣食住や光熱費、生活費や教育費、医療費が含まれています。意識していない方が大半ですが、子どもがいる家庭はすでに養育費を払っているのです。
離婚後、夫婦は婚姻関係がなくなり他人になりますが、子どもとの関係は変わりません。親子関係はこれからも続きます。日本では子どもの世話をすることが、両親の義務だと民法で定められています。
また日本は、片方の親しか親権を得られない、いわゆる「単独親権」です。離婚後は親権を得た親が、子どもと一緒に住んで養育します。親権がない親は養育費を支払うことによって、育児に参加します。親権がないから何もしなくていいのではなく、養育費を払うのが義務です。
離婚した場合の養育費の相場
離婚した場合の養育費の相場はいくらでしょうか。養育費の相場は、厚生労働省が発表した「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」を参考にしています。
<平成28年の養育費 月額平均>
- 母子世帯:43,707円
- 父子世帯:32,550円
また、子どもの人数によって、養育費の金額は異なります。
<子ども1人の月額平均>
- 母子世帯:38,207円
- 父子世帯:29,375円
<子ども2人の月額平均>
- 母子世帯:48,090円
- 父子世界:32,222円
子どもが2人だから単純に養育費が2倍になるわけではありませんが、子どもの人数が増えるにつれて金額は上がります。
これは養育費を払っている方の平均です。養育費の未払いは考慮されていません。
養育費が決まる要素
養育費はどのように定められているのでしょうか。養育費が決まる流れと要素について紹介いたします。
養育費が決まる流れ
協議離婚の場合は、夫婦の話し合いによって取り決められます。話し合い内容は、月にいくら払うか、支払い方法、いつまでに払うかなどです。夫婦の話し合いで決められない場合は、第三者に介入してもらい、離婚や養育費などの条件を話し合って決めます。第三者が入っても話し合いが上手くいかない場合は、裁判で争うことになります。
養育費に関する決まりは、夫婦の合意内容を書面に残しましょう。何も残していないと、後々に言った、言っていないなどの問題になりかねません。念書や覚書ではなく、公証役場で申請して「公正証書」にしておくと、法的に正当な効果を発揮します。
養育費が決まる要素
養育費の金額が決まる要素は、以下の4点です
- 子どもの人数
- 子どもの年齢
- 両親の年収
- 親が会社員なのか自営業者なのか
これらの要素から、子どもの生活にかかる費用を計算し、月々の養育費が決まります。子どもの人数が多ければ多いほど養育費は高くなります。また、子どもが0~14歳と15歳以上で分けて算出されています。中学生までは義務教育のため、15歳以上のほうが金額は上がります。
両親の年収も養育費に考慮されます。養育費を払う側だけでなく、受け取る側の年収も考慮されます。会社員か自営業かにより収入額から計算される割合が違うため、親の職業も養育費が決まる要素に含まれています。
養育費の算出方法
では、養育費はどのように計算されるのでしょうか。養育費には計算方法があり、「養育費が決まる要素」から算出されます。
しかし、計算方法が複雑かつ、大変手間がかかるため、実際に計算が行われることはほとんどありません。わかりやすくするために作成された「養育費算定表」を使います。養育費算定表は、言葉の通り養育費の金額を計算し表にしたものです。
2種類の養育費算定表
養育費算定表は、「裁判所作成のもの」と「日本弁護士連合作成のもの」の二つあります。
裁判所の算定表は年収や子どもの人数、年齢を考慮して養育費を計算しています。日本弁護士連合会の算定表は年収や子どもの数、年齢の考慮に加えて、世帯で発生する費用を世帯人数で割り計算しています。一般的に裁判所が作成した算出表を利用するケースが多いです。
養育費算定表の一例
算定表は、親権者の年収が横軸、支払い義務者の年収が縦軸になっています。そして子どもの年齢や人数でパターンを分け、そのパターン毎に表が作成されています。
裁判所作成の養育費算定表から、養育費の一例を紹介します。
養育費を払う親の年収が500万、親権がある親の年収が200万円だと仮定した場合は以下です。
子どもの年齢が上がると教育の費用も高くなるため、それに応じて養育費の金額が上がっているのがわかります。
また、両親の年収は上記と同じパターンで、子どもが2人の場合は以下となります。
算定表はあくまで目安
算定表はあくまでも目安であり、必ず養育費がその金額になるとは限りません。例えば、養育費算定表は子どもが公立の学校に通う場合を考えています。私立学校に進学する予定や、すでに進学している場合は、算定表の金額より高い金額を相手に要求する必要があります。また、習い事をさせたい場合はその金額を含めた値段を要求したほうがいいでしょう。
養育費計算シミュレーターが便利
最近では、養育費計算シミュレーターがあります。両親の年収、子どもの人数と年齢を入れるだけで簡単に教育費をシミュレーションができるものです。複数のサイトでシミュレーションを提供しているため、違いなどを比べてみてください。
養育費の期間
通常、養育費は未成年の子どもが成人して社会に出るまでにかかる費用のため、期間は基本的に20歳までです。しかし、近年では大学進学する子どもが多いため、両親ともに子どもを大学へ行かせたいと考えている場合は、22歳の大学卒業までに養育費の支払い期間を延ばすケースがあります。養育費を支払う義務は、長くても大学卒業までです。
2022年4月に成人の年齢が18歳に変わりました。「20歳まで養育費を払う」と2022年3月までに取り決めた場合は、「20歳まで」が適用され、「成人年齢が引き下がったから、18歳で養育費の支払い終了」という解釈にはなりません。
しかし、大学に行かない場合や両親のどちらかが大学進学を希望していない場合は、養育費の期間が18歳までのケースもでてきます。
「面会交流」についてはこちらの記事もご覧ください。
まとめ
本記事では、離婚後の養育費を解説いたしました。夫婦が離婚すると、親権がない親から養育費を受け取り、子どもと一緒に住む親が1人で育てることになります。生活が一変するため、不安が多いのではないでしょうか。
養育費の相場や平均を知って、少しでも不安や疑問が解消されたら幸いです。離婚や養育費でお困りの方は1人で悩まず、離婚問題を扱っている弁護士事務所に相談してみてください。