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離婚が認められる事由「悪意の遺棄」とは?該当するケースを解説

裁判で離婚が認められる事由のひとつに、「悪意の遺棄」があります。悪意の遺棄に該当する事例や当てはまらない事例とはどのようなものか、さらには証拠をどのように提示するのかを見ていきます。

民法770条1項2号では、配偶者から悪意で遺棄されたときとだけ定められています。悪意の遺棄について具体的な例が定められているわけではなく、それぞれの事情に応じた解決がなされます。そこでどういった事情があれば悪意の遺棄と認められるのか、認めてもらうにはどのように証拠を収集すればよいのかを解説します。

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[ご注意]
記事は、公開日(2022年11月9日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士に最新の法令等について確認することをおすすめします。

悪意の遺棄における夫婦の義務とは

民法752条に「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と規定されています。夫婦になった以上、ともに助け合いながら、仲良く夫婦生活を破綻させないよう維持していかなければなりません。この義務に違反する行為をすると、遺棄に当たります。

ただ同居をしないから直ちに遺棄というわけではなく、健全な夫婦生活を送る義務を怠る状況が遺棄に当たるといえるでしょう。

では悪意とはどのような意味で使われるかですが、倫理的に悪い意思といわれ、同居・協力・扶助の義務を怠っていれば夫婦生活が破綻すると認識しているだけでなく、責任がある配偶者がそれでも構わないと積極的に容認する態度を続けることだと考えられています。

つまり離婚事由に当たるためには、単に遺棄だけでなく悪意をともなわなければなりません。ですから、夫が家事を手伝ってくれない、子供の送り迎えをしてくれない、風呂に入れてくれないなど、その事実のみをもって悪意の遺棄には該当しないでしょう。

ただし他の事情と合わせて判断したときに、離婚事由に該当しないとは言い切れません。悪意の遺棄における夫婦の義務とは、できるだけ同居をしながら夫婦生活を続けるために協力し、互いに助け合わなければならない義務です。したがってこれに反するような行為をすれば悪意の遺棄になります。

ただ具体的にどのような行為が悪意、遺棄にあたるのかは個別に判断するしかなく、単純ではありません。過去の判例を参考にしながら判断するほかないですし、あいまいな定義だけに証拠が重要な意味を持つでしょう。

悪意の遺棄となるケースとは?

悪意の遺棄になるケースを具体的に見ていきましょう。

正当な理由もなく同居を拒否

夫婦は同居義務があるため、正当な理由もなく同居を拒否する、あるいは一方的に配偶者を家から追い出すような行為は悪意の遺棄に該当する可能性があります。ただし別居に合理性があれば問題ないケースもあります。夫婦関係が悪化しており、一定の冷却期間を置くためなど、よりよい夫婦関係を築くためであれば必ずしも別居が離婚事由になるわけではありません。

不貞関係を続けた上、生活費も入れない場合

配偶者とは別の相手と不貞関係を続けた上、夫婦関係を一切顧みずに生活費も入れない場合も該当するでしょう。また配偶者が病気であるにもかかわらず、家には帰らないときも同様です。

預貯金をギャンブルで使い果たす

一方的に預貯金をギャンブルに使い果たすことや、生活費を家庭に入れようとしないといった夫婦生活を維持する意思を示さないときも悪意の遺棄に当たります。

家庭内別居のケース

少し複雑な事情としては、家庭内別居のケースです。同居義務は果たしていますが、生活費も入れず言葉も交わさない状況のとき悪意の遺棄にあたるのかということです。この点は明確に答えを出せませんが、離婚事由になることは確かです。

その他のケース

仕事を理由に家に帰らないケースも悪意の遺棄に該当するかでいえば、難しいですが、総合的に判断して他の離婚事由になる可能性が高いです。

悪意の遺棄は、問題ある行為をした配偶者が倫理的に良くない意思を持っている必要があり、それを客観的に判断しなければなりません。証拠を上手に集めることができれば、悪意の立証も十分できます。

悪意の遺棄とならないケースとは?

配偶者が別居した状況であれば悪意の遺棄に当たるかといえば、そうではありません。仕事や出張を口実に家に長く帰らない場合、確かに同居の義務を果たしているとはいえませんが、生活費を入れているとすれば夫婦関係を維持する努力はしています。実際裁判でも悪意の遺棄とはいえないと判断しています。

生活費を入れないときでも悪意の遺棄に該当しない場合があります。たとえば夫が病気で働けない、リストラされ失業したなど生活費を入れられない事情があれば悪意の遺棄ではありません。当然ですが、単身赴任で別居しなければならないときには、夫婦関係を維持するために必要な行為ですから悪意の遺棄に該当しません。

出産や病気療養のための別居も同様です。やや微妙なケースでは、夫婦間にトラブルがあってお互い冷静になるためや、すでに婚姻関係が破綻した別居は悪意の遺棄とはなりません。ただし別の離婚事由に該当することは考えられます。

夫婦間の義務が同居と協力そして扶助ですから、同居していても生活費を入れないときや、別居しているが生活費は入れているときなど、いずれかの義務のみを怠っているときは、悪意の遺棄にならないことも少なくありません。したがって離婚を求める側は、別の離婚事由を求めることも検討すると良いでしょう。 遺棄は夫婦の義務違反ですから比較的立証しやすいといえますが、悪意の立証は簡単ではありません。

こうした点をよく理解した上で、悪意の遺棄となるケースとならないケースを知っておくことが、離婚を考えたときに役立ちます。

悪意の遺棄の証拠とは?

悪意の遺棄を立証するためには、夫婦の同居義務や協力義務あるいは扶助義務に反する行為を裏付けなければなりません。これらの違反行為を裏付けるには、会話や行動履歴を残しておく必要があります。

たとえば、配偶者の行動が不自然だと感じ始めたときに会話を録音しておくと良いでしょう。ただ相手に気づかれてかえって夫婦関係が不穏になる可能性もあるため、十分注意が必要です。その際、家に帰る回数が少ない理由や生活の維持に協力してくれない理由などをさりげなく聞いてください。まだ相手の意思が分からない段階で詰問するのは逆効果です。

また、ゆっくり考えてやり取りができる点では、メールやショートメッセージも有効です。履歴が明確に残りますし、相手の意思がはっきりします。生活費を入れなくなった証拠として、預金通帳も効果的な証拠です。相手が協力的だったときの入金記録があれば十分比較できます。

日々のさりげないやり取りでも、日付や時刻とともにメモなどに記録しておくことで、具体性が増し有力な証拠になるでしょう。一方で証拠は、離婚を請求する側に有利なばかりではありません。録音した会話やメールなどの履歴メモが、不利な内容と受け取られることもあります。 どういった内容が不利なのかは、法律に詳しくなければ分からないことが多いため弁護士に相談するほうが賢明でしょう。

せっかく努力して集めた証拠が、自身に不利になれば本末転倒です。これら以外にも持ち物の変化や身なりの変化などにも注意し、記録しておくと役立ちます。仮に悪意の遺棄が認められなくても、他の離婚事由が認められる可能性が高くなります。

まとめ

悪意の遺棄とは、夫婦間における同居や協力あるいは扶助義務に違反する状況を意味します。これらの違反を根拠に離婚が認められることがあるため、悪意の遺棄に該当すると思う方は弁護士に相談すると良いでしょう。 証拠の集め方やその後の対応を的確にアドバイスしてくれます。離婚の決断は大変なことですが、現状を変えるため悪意の遺棄を初め離婚事由についてよく理解し、新たな生活をスタートしましょう。

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